サラリーマン時代は、年金も給料からの天引きで、何も心配しなくてよかった...という方も多いと思います。
しかもサラリーマン時代は、厚生年金が国民年金の上の部分に乗っかっていたわけで、厚生年金部分の手厚かった保障、失業者となった場合には、これも手放してしまうことになりますね(クーッ)。
年金では失業者はサラリーマンに比べ確かに不利ですが、だからといって愚痴っていても仕方ありません。
老後を考えた場合、せめて国民年金だけでも、きちんと手当てしていく必要があります。
「なに、年金制度などいずれ破たんするといわれているし、それなら保険料など払うだけ損だ。」などと、メディアの記事に寄りかかって考えている人がもしいたら、これは大変危険な話です。
だいたいこの低金利の時代、年金よりも高利回りで回る金融商品などは、民間に存在しません。
厚生労働省のモデルを使った試算によれば、団塊の世代に近い1945年生まれ(2005年で60歳)が受け取れる年金給付額は「保険料負担額の3.8~4.6倍」であるのに対し、2005年で成人した1985年生まれが受け取れる年金給付額は、収めた「保険料負担額の2.3倍」にまで収縮しています。
しかしそれでも、いま民間の金融商品を見渡して、払込んだ金額の倍以上を受け取れるものなどまずないでしょう。
このあと給付額の実質的な切り下げなどが行われる可能性はもちろんあるにせよ、それでも他の民間の金融商品に比べると、いまだ年金はずっとずっと有利なのです。
かつての年金記録漏れ問題で行政の信用こそ確かにがた落ちですが、これからはさすがに世間の目も厳しくなって、今までよりずっときちんと仕事をやるでしょうから、ちゃんと払ってその記録を自分で保管しておきさえすれば、今後は必要以上に心配しなくてもよいでしょう。
そりゃあ、ある世代からはひょっとしたら、払い損になるかもしれない...という懸念が、もはや確かに捨て切れない時代になっていることは事実です。
ただし日本政府が財政的に万歳して、年金制度がガラガラと崩壊するのを何もせずみんなで指をくわえてみている...といった事態が、あなたが老後を迎える近い将来に訪れる可能性のほうこそ極めて低いと考えるほうが、むしろ現実的だと思うのですが、いかがですか。
万々一トンデモな事態が訪れたにしても、そのときは民間の金融機関だって、一緒くたに非常事態にさらされているはずですから、そんな中で国よりも安全度の高い運用先を探し当てて、今の国民年金以上の利回りを確保するなどという難度の高いマネが、ホントにできますか?
(「海外の金融商品がある」なんて言わないでくださいね。そもそも海外の金融機関に、手間ヒマをかけて年金充当分のおカネをゆだねる意思、本当にありますか(笑)?)
個人個人の判断ですが、誰しも身体機能が衰えてくる老後に、本当に年金ナシで暮らす選択がよいかどうかは、考えどころですよ。
いざとなったら、民間金融機関の「個人年金保険」がある?
でも、個人年金保険こそ、利回りの点で国民年金にはかないませんし、運営する民間会社が経営が将来的に左前になるリスクは、日本国がどうにかなる可能性よりも、むしろずっと高いんじゃないでしょうか?
それに国民年金は、払い込んだ掛け金は「社会保険料控除」として全額控除できます。これは確定申告のときに、大きなメリットとなります。
民間の個人年金保険などは「生命保険料控除」として5万円しか認められませんので、少なくとも税金面では、控除のメリットを考えると、国民年金のほうが明らかにトク...ということになります。
さてそうは言っても失業の身、月額15,590円(平成27年度現在)の国民保険料の支払い負担が苦しい...ということは、実際ありますよね。
そのような失業者のために、国民年金では、「保険料の退職(失業)による特例免除制度」というものが用意されています。
保険料を納めることが、経済的に難しいとき(日本年金機構)
免除された期間については、年金額の計算は「保険料納付の場合の2分の一」になってしまいます(逆を言えば、半分は国が年金として負担するということなのです!)が、10年以内ならば免除された期間について未納分を「追納」することで、満額をもらうことができるようになります(ただし、3年目を過ぎると、もともと納付すべき保険料の額に、「加算金」がついてしまいますので、できるならば免除から2年以内に、なんとかして追納しておきたいところです)。
大きなメリットとなるのは、「保険料の全額免除期間については、全額納付時の年金額の2分の1が国から支給される」点です。
障害年金や遺族年金についても、免除が承認された期間が支給対象期間となる点も見逃せません。
この特例免除を受けるためには、社会保険事務所への申請とその認定が必要になるので、詳細については、お住まいの地域の社会保険事務所にたずねてみましょう。
将来的には、所得に応じて自動的に支払保険料が軽減されるような制度づくりが厚生労働省で検討されているようですが、少なくとも現時点では、この保険料納付免除の制度を利用したければ、「本人が自ら申請(郵送も可)」しなければなりません。
国民年金を受け取るためにはご存じのとおり、一定の年月は保険料を納め「受給資格期間」なるものを満たす必要があります。
実はこの受給資格期間、「保険料を納めた期間」だけでなく「保険料の免除を受けた期間」も足し込まれるルールになっているのです。
もし免除を申請せずに単純に未納を続けた場合、その未納期間は、国民年金を受け取るための受給資格期間にはカウントされません。
いずれおカネが作れたときに納めるという、「事後納付(後納)」の制度があります。
しかも2010年4月には「年金確保支援法」という法律によって、さかのぼって未納分を事後納付できる期間が、それまでの2年から「10年」に延長されました(この「10年の後納制度」は平成27年9月3末で終了し、現在は「平成30年9月までの3年間に限り、過去5年分まで」納めることができます)。
国民年金保険料の後納制度(日本年金機構)
ただし普通に支払っている人とのバランスをとるため、一定の加算金(利息)が発生することにも注意が必要です。
また免除期間の承認を受けている場合、その期間は後納制度を使うことができません。その場合は次にご説明する「追納」制度を使うことになります。
保険料の納付免除を申請して認められた場合は、「10年以内なら」免除を受けた期間内の保険料を後から納めることができる、「追納」制度を利用することができます(「追納」と上記の「事後納付(後納)」は別用語。なお追納においても、当時の保険料に一定の「加算金」が付きます)。
さて上記の「年金の受給資格期間」ですが、2012年(平成24年)8月に「年金機能強化法」が成立し、2017年(平成29年)10月からは、年金の受給資格期間がこれまでの25年(300月)から、10年(120月)に短縮されることになりました。
必要な資格期間が25年から10年に短縮されました(日本年金機構)
年金Q&A(日本年金機構)
保険料を後納し、年金の受給資格期間を満たせばOKとなる余地が大きくなる点でこれは確かに朗報ですが、そうは言っても後からまとめて納めることにすると、その時点での支払負担額が非常に大きくなって大変になります。
後納制度はあまり知られていないこともあり、利用者がなかなか増えていないのが現状ですが、分割して1ヶ月分から後納することもできるため、年金の受給権を確保するためにも検討したいところです。
いずれにせよ、トータルで年金の受給資格期間を満たすように保険料を納めることができなければ、サラリーマン時代に払ってきたコツコツ給料から天引きされてきた分を、全額ドブに捨てることにもなりかねません。
受給条件を満たさなければ、国民年金(過去の厚生年金も)は一円ももらえず、それまでの分が払い損になるのです。
考えてみたら、恐ろしいことですよね…。
いま失業中の方も、先々に「あの時ちゃんとやっといてよかった!」となることに期待して、保険料納付免除の申請だけはきちんと行っておきましょう。